11月1日は何に陽(ひ)が当たったか?
1986年11月1日は、アメリカのプログレッシブ・ロック・グループ、Kansasのシングル、”ALL I Wanted(邦題:オール・アイ・ウォンテッド)”がBillboard HOT100シングルチャートで81位に初登場した日です。1983年の”Fight Fire With Fire(邦題:炎の欲望)”以来、3年ぶりのチャート・インで、Steve Walsh(スティーヴ・ウォルシュ。key,vo)がリード・ヴォーカルをとるシングルとしては、1980年の”Got to Rock On(邦題: ロック・オン)”以来、6年ぶりのチャート・インとなります。
1984年に”The Best of Kansas(邦題:ベスト・オブ・カンサス)”をリリース後、活動停止状態だったKansasが、6年ぶりに戻ってきたSteve Walshによって再結成を果たします。1980年にリリースされたSteve Walshのソロ・アルバム”Schemer-Dreamer(邦題:スキーマー・ドリーマー)”で、ゲスト参加したDixie Dregs(ディキシー・ドレッグス)のギタリスト、Steve Morse(スティーヴ・モーズ。gtr)や、Walshのソロ・プロジェクト、Streets(ストリーツ)のベーシスト、Billy Greer(ビリー・グリアー)がKansas再結成に加わり、そしてKansasを支えてきたオリジナル・メンバーのPhil Ehart(フィル・イハート。Drums)とRich Williams(リッチ・ウィリアムス。gtr)と合流、Steve Walshを軸とするKansasが復活しました。
折しもこの1986年は過去の大物アーチストやバンドの復帰、復活が多く見られました。たとえば、Emerson, Lake & Palmer(EL&P)ではCarl PalmerはAsia(エイジア)在籍のため不参加でしたが、代わりに Cozy Powell(コージー・パウエル)を入れてEmerson, Lake & Powellとして復帰したり、Steve Winwood(スティーヴ・ウィンウッド)の4年ぶりの復帰作などがでました。アメリカでもKansasと同じカテゴリーに入れられることの多かったJourney(ジャーニー)やBoston(ボストン)の復活、またなんといっても60年代に絶大な人気を博したThe Monkees(モンキーズ)がリユニオンされて大いに話題を呼びました。Kansasは1986年も終わりに近づいた頃の復活でしたが、アメリカのラジオ局やリスナーは彼らを忘れてはいませんでした。
”Power(邦題:パワー)”と名付けられたKansasの10枚目のスタジオ・アルバムは、全盛期のプログレッシブさは薄れており、Steve Walshのヴォーカルによる”歌”と、Steve Morseのテクニカルなギターさばき、馴染みやすいサウンドを武器に、新しいKansasとして甦ったのです。この先行シングルがアルバム3曲目に収録された”ALL I Wanted“です。
非常にメロディアスで親しみやすいミドル・テンポのロックで、Kansasにしては異様なぐらい爽やかなラブソングですが、WalshとMorseの、二人のSteveがこのラブ・ソングを書き上げました。プロモーション・ビデオにおいてもこの二人しか登場せず、Walshが天高く歌い上げ、Morseが心のこもったギターを奏で、そして随所に日常の若いカップルの光景を織り交ぜた、大変微笑ましい作品に仕上がっています。
さて陽の当たった1986年11月1日付HOT100で81位にエントリーしたこの曲は、その後68位→61位→47位と順調に進み、5週目でKansas7曲目のTop40入りとなる40位にランクイン、続いて34位→30位→25位と上位ランクも期待できる上昇ぶりでしたが、年末年始ということもありアクションは緩み(1月1週目は休みのため12月最終週と同位)、23位が2週続いた翌週に22位とぽつんと上がって、1979年に23位を記録した”People of the South Wind(邦題:まぼろしの風)”を抜き、もはやここまでと思われました。しかし1987年1月17日付にポンと19位にアップ、なんとかTop20入りを果たしてこれが最高位となり、その後は23位→38位と下降していき、結果18週チャートインしました。KansasのTop20入りは1982年の”Play the Game Tonight(プレイ・ザ・ゲーム・トゥナイト)”以来となります。
なお”ALL I Wanted”はメインストリームロックチャート(当時はAlbum Rock Tracks)では1986年の12月13日付より2週続けて10位を記録、Top10入りを果たして12週チャートインしています。Adult Contemporaryチャートでも14位にランクされ、上々の復帰作となりました。
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