11月15日は何に陽(ひ)が当たったか?

1986年11月15日は、アメリカのロック・ミュージシャン、Eddie Money(エディ・マネー)のシングル、”Take Me Home Tonight(邦題:テイク・ミー・ホーム・トゥナイト)”がBillboard HOT100シングルチャートで最高位4位を記録し、Eddieのキャリア・ハイのポジションを獲得した日です。陽の当たったこの日は、メインストリームロックチャート(当時は Album Rock Tracks)でアクションを終える最終ランクイン日となり、49位にランクして15週のチャート・アクションを終え、次週は圏外に消えていきます。シブいロックソングで、個人的にも長く愛している名曲中の名曲です。
ニューヨークの警官出身という異色の経歴を持つEddie Moneyは、この時まで5枚のスタジオ・アルバムをリリースし、うち1977年の1作目”Eddie Money(邦題:噂のエディ・マネー)”から1982年の4作目”No Control(邦題:ノー・コントロール)”までは順調にBillboard200アルバムチャートでTop20位内にランクする大ヒットを記録しましたが、1983年の第5作”Where’s the Party?(邦題:パーティの夜)”は67位に終わり、シングルもヒットせず、私生活でもドラッグ依存が危ぶまれて、文字通り”No Control”の状態となって次作の制作が停滞、その人気に翳りが出るかと思われました。
“Where’s the Party?”のリリースから3年が経過し、EddieはNeil Sedaka(ニール・セダカ)やYvonne Elliman(イヴォンヌ・エリマン)、Joe Cocker(ジョー・コッカー)といった大御所ミュージシャンのアルバム制作に関わった名プロデューサー、Richie Zitoらの協力を得ました。レコーディングは1985年から始まりましたが、先行シングルとなる”Take Me Home Tonight“の制作にあたり、Richieはこの曲をEddieが復活を遂げるための重要な作品としていました。
“Take Me Home Tonight”の歌詞には”Listen, honey, just like Ronnie sang Be my little baby”という部分があり、”Be my little baby”の部分はガールズ・グループ、The Ronettes(ロネッツ)が、Phil Spector(フィル・スペクター)のプロデュースで1963年10月12日付HOT100シングルチャートで3週2位を記録した大ヒット曲、”Be My Baby(邦題:ビー・マイ・ベイビー)”の歌詞から取られており、”Ronnie sang”の”Ronnie”とはThe Ronettesのリード・シンガーであるRonnie Spector(ロニー・スペクター。Phil Spectorとの結婚前はVeronica Bennett)を指します。Eddieは”Be my little baby”は自分自身ではなくて女性に歌ってもらう方が際立つと考えて、友人であるMartha Davis(マーサ・デイヴィス。カリフォルニア・バークレーのロック・グループ、The Motelsのヴォーカリスト)に”Be my little baby”のフレーズを歌ってもらうように依頼したところ、MarthaはEddieにRonnie Spector本人に歌ってもらったらどうかと奨められ、結局EddieはRonnieの家に電話したのです。この時電話の向こうでガチャガチャ言う音が聞こえてきたので、Eddieがこのことを尋ねると、Ronnieはちょうど洗い物をしている最中であり、他の家事も忙しく、またPhil Spectorへの法的訴訟もあるなどして音楽活動も辟易しており、シーンに戻ることを嫌がっているとのことでした。Eddieは偉大なシンガーの名曲を導入したこの”Take Me Home Tonight”を本当に素晴らしい曲であり、この曲をRonnieに捧げたいと気持ちを伝え、一緒に歌わせて欲しいという願いをRonnieに強くうったえたところ、Eddieの熱心な依頼に共感したRonnieはEddieの依頼に快く引き受けることになりました。
かくして、Eddieの復活だけでなく、Ronnieの音楽シーンにカムバックするというダブル効果で、”Take Me Home Tonight”は世に送り出されました。モノクロのプロモーション・ビデオでもRonnieは抜群のスタイルで登場し、しかも登場をじらすように最初Ronnieはシルエットや影で姿はあれど顔は見えないように登場させ、”Be my little baby”の最初のパートで始めて、Eddieが歌っているステージ上部モニターにRonnieの顔が一瞬映るものの画面が粗くではっきり確認できず、歌っているEddieの元へ彼女は踊りながら顔を見せないまま会場にやってきます。そしてクライマックスあたりでようやくRonnieの顔のアップを登場させるというこの上ない素晴らしい演出でした。ネヴァダ州にあるスポーツアリーナ、Lawlor Events Centerを使用、Eddie一人でそのステージに上がりサックスを片手に熱唱し、Ronnieが客席側の通路から姿を現して一緒に歌うという設定で、現在においても個人的に非常に気に入っているビデオです。あくまでも推測に過ぎませんが、Eddieがステージに立ち、Ronnieが客席の通路で歌うという設定は、Eddieの復活ソングなので、Eddieの顔を立てて一緒にステージに立つのをRonnieは遠慮したのではないでしょうか。もしそうだとすればRonnieの人柄も垣間見えて微笑ましい限りです。
EddieとRonnieの大復活を遂げた素晴らしい名作ビデオはこちらです(Youtubeより)。
1986年8月にシングル”Take Me Home Tonight”がリリースされ、6枚目のアルバム”Can’t Hold Back(邦題:キャント・ホールド・バック)”は10月にリリースされました。Album Rock Tracksチャートでは1986年8月9日付で34位にエントリーし、その後は12位→5位→4位→3位→2位とじわじわ昇りつめ、Eddieにとって1982年の”Think I’m in Love(邦題:アイム・イン・ラブ)”以来のロックチャート1位を記録しました。首位は2週守られて、あとは降下していき、陽の当たった11月15日の49位でアクションを終え。結果15週のチャートインを果たしました。
そして、肝腎の総合チャートであるHOT100シングルチャートでは、8月16日に92位と下位でエントリーしました。このエントリーを考えても、やはり当時はEddieの人気がどん底に喘いでいたことが分かります。しかし次週は82位と上昇、その後74位→64位→56位→46位と順調に駆け上がり、7週目にして38位と、これも1982年9月18日付から3週連続で16位を記録した”Think I’m in Love”以来のTop40入りを果たし、Eddie自身5曲目のTop40ヒット・ナンバーとなりました。その後は33位→23位→19位→15位と、”Think I’m in Love”どころか、1978年6月10日に11位を記録したEddieのデビュー曲”Baby Hold On(邦題:ベイビー・ホールド・オン)”にも迫り、次週で一気に記録を塗り替える9位を記録、Eddieにとって、初めてのTop10入りを果たしました。次週で6位、そして陽の当たった11月15日付で最高位4位を記録し、以後は降下していきましたが、結果23週チャートインし、1986年のYear-Endチャートで100位内59位を獲得しました。1987年の the 29th Annual Grammy Awardsにおいても Best Male Rock Vocal Performanceにノミネートされました。
Eddie Money最大のヒット曲を産み出した”Take Me Home Tonight”により、ゲスト参加したRonnie Spectorもシーンにカムバックを果たし、Ronnieは1987年5月、7年ぶりとなる2枚目のスタジオ・アルバム、”Unfinished Business(邦題:アンフィニッシュト・ビシネス)”がリリースされ、協力とヒットの恩返しとして、1曲目に収録された”Who Can Sleep”にて、Eddieはヴォーカリストとしてゲスト参加しています。その後の”Be My Baby”効果は絶大で、大ヒットした1987年の映画”Dirty Dancing(邦題:ダーティー・ダンシング)”のサウンドトラック盤にも収録され、1999年には Grammy Hall of Fame Award(グラミー殿堂入り)を果たすことになるのです。

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