11月26日は何に陽(ひ)が当たったか?

1971年11月26日は、イギリスのプログレッシブ・ロック・グループ、Yes(イエス)のスタジオ・アルバム第4作”Fragile(邦題:こわれもの)”がリリースされた日です。全盛期のメンバーによる代表的なアルバムとして現在でも愛聴されている名盤の登場です。
1971年2月リリースの前作”The Yes Album(邦題:サード・アルバム)”発表後、Yesではキーボーディストのメンバーチェンジがあり、1971年7月末にTony Kaye(トニー・ケイ。key)が脱退し、イギリスのフォーク/プログレッシブ・ロック・グループ、Strawbs(ストロウブス)のメンバーだったRick Wakeman(リック・ウェイクマン。key)が加入しました。これによりメンバーはJon Anderson(ジョン・アンダーソン。vo)、Chris Squire(クリス・スクワイア。bass,vo)、Steve Howe(スティーヴ・ハウ。guitar,vo)、Bill Bruford(ビル・ブラッフォードにRickを加えた5人でアルバム制作を行うことになりました。
この頃は、前作からのシングル、”Your Move(邦題:心の光)”がチャートインしていた時期で、Billboard HOT100シングルチャートでは1971年12月4日付から2週連続40位を記録、Yesにとって記念すべき初Top40入りヒットが記録されました。
前作同様、Yesと共にプロデュース、およびエンジニアリングをEddie Offord(エディ・オフォード)が担当し、アルバムのカバー・イラストには初めてRoger Dean(ロジャー・ディーン)のデザインが採用されました。
収録曲は全9曲、うち4曲がグループとしての作品(A-1,A-4,B-2,B-5)で、残り5曲はメンバーのソロ作品です。リストは以下の通りです。
A面(アナログ盤)

  1. Roundabout(邦題:ラウンドアバウト)”・・・Anderson,Howe
  2. Cans and Brahms(Extracts from Brahms’ 4th Symphony in E minor Third Movement)(邦題:キャンズ・アンド・ブラームス )”・・・Johannes Brahms,arranged by Wakeman
  3. We Have Heaven(邦題:天国への架け橋)”・・・Anderson
  4. South Side of the Sky(邦題:南の空)”・・・Anderson, Chris Squire

B面

  1. Five Per Cent for Nothing(邦題:無益の5%)”・・・Bruford
  2. Long Distance Runaround(邦題:遙かなる思い出)”・・・Anderson
  3. The Fish(Schindleria Praematurus)(邦題:ザ・フィッシュ)”・・・Squire
  4. Mood for a Day(邦題:ムード・フォー・ア・デイ)”・・・Howe
  5. Heart of the Sunrise(邦題:燃える朝やけ)”・・・Anderson, Squire, Bruford

“Fragile”は、A-1の”Roundabout“で幕を開けます。アコースティック・サウンドからヘビーなロック・サウンドへ劇的に展開する、8分を超える大作で、Jonの強力かつ透明感ある歌声が非常に印象的なナンバーです。3分少々の編集ヴァージョンでこのアルバムからのシングルとして選ばれ、1971年4月15日付Billboard HOT100シングルチャートで2週連続13位と、初のTop20入りを果たしました。カナダのRPMシングルチャートでは9位、全米でも Cash BoxのシングルチャートTop 100でも10位とTop10入りを果たしました。また日本では近年アニメの主題歌にも適用されました。Jonのヴォーカルだけでなく、Chris Squireの強力なベースのリフや、Steve Howeのアコースティック・ギター・ソロ・パート、その2度目のアコースティック・ソロのバックに遠くから聞こえてくるRick Wakemanの早弾きシンセ・ソロなど、メンバーの”静”と”動”といった変幻自在で卓越した奏法は聴き所が随所にあり、8分という時間も忘れさせてくれます。
A-2はJohannes Brahms(ヨハネス・ブラームス。1833-97)の”交響曲第4番ホ短調作品98″からの抜粋で、Rickのアレンジによるソロ作品です。Rickはこの作品で扱う楽器を、すべてピアノやオルガン、ミニムーグなどで使い分けて演奏するという非常に奥の深い一品になっており、これを12回のテイクで完成させたと言われています。
A-3はJon Andersonのソロ作品で、聴くことができるヴォーカル・パートのすべてはJonが担当しています。Paul McCartneyやSteve Winwoodの声を真似たりしているようで、改めてJonの声域の広さを思い知らされます。
吹き荒れる風の効果音とBill Brufordの迫力ある連打でスタートするA-4は8分の大作です。ヘビーでスリリングな楽曲ですが、音の迫力とは対照的にJonの透明感ある歌声も素晴らしく、”all of eternity”の最後の語尾を伸ばす歌い方も印象的です。また中間部のRickの重厚なピアノ・ソロも聴かせ所です。
B面1曲目はBill Brufordのソロ作品で、30秒少々の32小節の中にジャズの雰囲気もしっかり醸し出す一方で、複雑な短音の展開を鏤めたテクニカルな作品です。
シングル、”Roundabout”のB面にも収められたB-2は、ライナー・ノーツによれば、”Corporal Salt(ソールト伍長)”のタイトル案もあったとされますが、The Beatles(ビートルズ)の”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”の”Sgt. Pepper(ペパー軍曹)”の捩りと誤解されることから、改題したというエピソードがあります。この曲のエンディングにSteveのギター・ソロが入り、流れるようにB-3に入ります。
B-3はChris Squireのソロ作品で、ミステリアスな雰囲気にChrisの独特の響きあるベース・リフが繰り返され、後半にはヴォーカル(おそらく副題の”Schindleria Praematurus”の語を発していると思われます)も入ります。タイトルの”Fish”はChrisのニック・ネームとして有名ですが、副題はその魚の名前”シラスウオ”を指します。”シラスウオ”はハゼの種類らしいとのこと。
B-4はSteveのソロ作品で、前作に続いてアコースティックギターのソロ・ナンバーです。前作の “Clap”と同様、スパニッシュな雰囲気を持つ、落ち着いたナンバーです。
最後を飾るB-5は、のちのYesのライブには必要不可欠なナンバーで、Yesサウンドの醍醐味を味わうことのできる11分の大作です。本作5人のラインナップで初めてプレイした作品がこのナンバーです。ベース、ドラム、ギターのヘビーなイントロで始まり、合間に入るRickのキーボードとの絶妙な掛け合いは見事で、その後RickのメロトロンをバックにChrisのベース・ソロに入りますが、その間にSteveの遠くからスーッとフェイド・インして入るエレキ・ギターの登場が非常に圧巻です。緊張感に包まれた3分半の長いインストの後、Jonの” Love comes to you and you follow”の囁くような歌声が入ると、より宇宙的な広がりが促され、”Sharp”、”Distance”のかけ声が強くなるにつれて音の展開もドラマティックに進んでいきます。7分後のスリリングに展開するインスト・パートは神業ともいうべきプレイで楽しませてくれます。B-5が終わった後に、なぜか隠しトラック風にA-3がリプライズで流れるのも非常に興味深いです。
“Fragile”は本国イギリスではUKアルバムチャート7位、カナダのアルバムチャートでは6位、アメリカのBillboard200アルバムチャートに至っては1972年2月26日付から4週連続で4位と躍進し、アメリカではダブル・プラチナに輝いて、Yesを代表するアルバムとなりました。2003年と2015年には収録曲の別テイクや未発表曲などを加えた、”Fragile”の再発売が施されております。

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