4月9日は何に陽(ひ)が当たったか?
1983年4月9日は、アメリカのロック・グループ、Styx(スティクス)がStyx初の公式ライブ・アルバム、”Caught in the Act(邦題:スティクス・ライヴ)”のレコーディングを始めた日です。ニュー・オリンズのSaenger Theatre(ゼンガー・シアター。ウェブサイトはこちら)で1983年4月に行われたライブを音源に、2日間制作が行われ、同年同月にリリースされました。Styxにとっては初の公式ライブ盤で、かつ初の2枚組アルバムとなりました。
1976年発表の”Crystal Ball(邦題:クリスタル・ボール)”以来、Dennis DeYoung(デニス・デヤング。vo,key)、John Panozzo(ジョン・パノッツォ。drums)、Chuck Panozzo(チャック・パノッツォ。Bass)、James [JY] Young(ジェームズ・ヤング。gtr,vo)、Tommy Shaw(トミー・ショウ。gtr,vo)の5人で創り上げた音楽は、1977年発表の”The Grand Illusion(邦題:大いなる幻影。全米6位)”よりヒット街道を直進していきます。1978年発表の”Pieces of Eight(邦題:古代への追想。全米6位)”、1979年発表の”Cornerstone(邦題:コーナーストーン。全米2位)”はいずれも大ヒットを記録、特に”Cornerstone”からのシングル、”Babe(邦題:ベイブ)”はBillboard HOT100シングルチャートで1位を記録し、幅広い聴衆層を獲得しました。
そして1981年には”Paradise Theatre(邦題:パラダイス・シアター)”がリリースされ、このアルバムはBillboard200アルバムチャートNo.1を記録、文字通りグループは全米のロック&ポップスの頂点に立ち、グループの黄金時代を築き上げたのです。
1983年2月リリースの”Kilroy Was Here(邦題:ミスター・ロボット~キルロイ・ワズ・ヒア~。全米3位)”もシングル、アルバム共に大ヒットを記録して、翌3月からツアーも行われました。ツァーは”Kilroy Was Here”のストーリー性を織り交ぜた、シアトリカルなロック・コンサートとなりましたが、ツァー終了後にTommyがグループ活動を消極化していき、”Caught in the Act”に唯一収録されたスタジオ録音の”Music Time(邦題:ミュージック・タイム)”のプロモーション・ビデオ制作中にはTommy自身のソロ・アルバム”Girls with Guns(邦題:ガールズ・ウィズ・ガンズ)”の制作を並行させておりました。
制作陣の盟友Gary Loizzoが営むPumpkin Studiosにて”Caught in the Act”の制作が行われました。これまでと同様、Styxのセルフ・プロデュース、Gary Loizzo、Rob Kingsland、Ted Jensenらのエンジニア陣で制作が行われました。
またアルバムと並行して、ビデオ”Caught in the Act“も制作され、”Kilroy Was Here“のショート・フィルム(監督:Brian Gibson)をオープニングに、Saenger Theatreのライブ模様を、アルバム曲目とは一部違えてリリースされました(プロデュース:Jerry Kramer)。
まずアルバムのトラックリストです。
Side-1(アナログ盤)
- “Music Time(邦題:ミュージック・タイム)”・・・Dennis作
- “Mr. Roboto(邦題:ミスター・ロボット)”・・・Dennis作
- “Too Much Time on My Hands(邦題:時は流れて)”・・・Tommy作
- “Babe(邦題:ベイブ)”・・・Dennis作
Side-2
- “Snowblind(邦題:白い悪魔)”・・・JY,Dennis作
- “The Best of Times(邦題:ザ・ベスト・オブ・タイムズ)”・・・Dennis作
- “Suite Madame Blue(邦題:スィート・マダム・ブルー)”・・・Dennis作
Side-3
- “Rockin’ the Paradise(邦題:ロッキン・ザ・パラダイス)”・・・Dennis,JY,Tommy作
- “Blue Collar Man (Long Nights)(邦題:ブルー・カラー・マン)”・・・Tommy作
- “Miss America(邦題:ミス・アメリカ)”・・・JY作
- “Don’t Let It End(邦題:愛の火を燃やせ)”・・・Dennis作
- “Boat on the River(邦題:ボート・オン・ザ・リヴァー)”・・・Tommy作
Side-4
- “Fooling Yourself (The Angry Young Man)(邦題:怒れ!若者)”・・・Tommy作
- “Crystal Ball(邦題:クリスタル・ボール)”・・・Tommy作
- “Come Sail Away(邦題:永遠の航海)”・・・Dennis作
ビデオのトラックリストです
- Kilroy Was Here(Short Film)
- “Mr. Roboto“
- “Rockin’ the Paradise“
- “Blue Collar Man“
- “Snowblind“
- “Too Much Time on My Hands“
- “Don’t Let It End“
- “Heavy Metal Poisoning(邦題:ヘヴィ・メタル中毒)”・・・JY作
- “Cold War(邦題:冷たい戦争)”・・・Tommy作
- “The Best of Times“
- “Come Sail Away“
- “Renegade(邦題:逃亡者)”・・・Tommy作
- “Haven’t We Been Here Before(邦題:時が過ぎれば)”・・・Tommy作
- “Don’t Let It End (Reprise)(邦題:ロックンロールの火を燃やせ)”・・・Dennis作
さらに、ビデオのDVD化に伴い、以下の bonus tracksが加えられました。
- “Come Sail Away(1977 Promo Video)”
- “Borrowed Time(邦題:虚飾の時。1979 Promo Video)”
- “Babe(1979 Promo Video)”
- “Boat On the River(1979 Promo Video)”
- “A.D.1928(邦題:1928年~パラダイス・シアター・オープン~)”・・・Dennis作)”/”Rockin’ the Paradise(Previously Unreleased Music Video)”
- “The Best of Times(Music Video)”
- “Too Much Time on My Hands(Music Video)”
- “Mr. Roboto(Music Video)”
- “Don’t Let It End(Previously Unreleased Music Video)”
- “Heavy Metal Poisoning(Previously Unreleased Music Video)”
- “Haven’t We Been Here Before(Previously Unreleased Music Video)”
- “Music Time(Previously Unreleased Music Video)”
アルバムは1975年発表の”Equinox(邦題:分岐点)”以降の作品から”Kilroy Was Here”まで満遍なく選曲されておりますが、ビデオは”Kilroy Was Here”の収録曲を中心に選曲されています。ライブ・バンドとしての下積みが長いグループだけに、コンサートでの熱い臨場感が体の芯まで伝わってくるような、非常に感動的なライブ盤です。
アルバムでは、”Best of Times”のイントロに”Paradise Theatre”の最終章であるDennisの作品、”State Street Sadie(邦題:ステイト・ストリート・セイディ)”を聴かせてくれたり(ビデオもあり)、”Suite Madame Blue”の”~You conquered the world and more heaven’s door~”のパートでDennisが”more”の部分を伸ばし、ビブラートを効かせながら息継ぎなく熱唱するという、これぞプロフェッショナルの歌唱を見せてくれたり、ビデオにおいては、”Rockin’ the Paradise”に入る前のJYのテクニカルなギター・ソロ、”Heavy Metal Poisoning”におけるJY,Panozzo兄弟の軽快なダンス、”Cold War”での観客に飛び込みながらのTommyの華麗なギター・ソロ、”Come Sail Away”のDennisでの熱唱に酔い痴れた観客の女性がステージに上がり込んでDennisに抱きつくシーン、”Renegade”のエンディングから続くJohnの見事なドラム・ソロ、”Don’t Let It End (Reprise)でのTommyの感動を呼ぶギター・ソロなど、実に味わい深く楽しませてくれるシーンが山ほどあります。
Billboard200アルバムチャートでは、1984年4月21日に69位で初登場、以後49位→34位→33位と上がり、5月19日付より2週連続で31位を記録後、後退して計15週のチャートインしました。ロック部門においてはメインストリームロックチャート(当時はThe Rock Albums & Top Tracks charts)でのThe Rock AlbumsチャートにおいてもTop50には入らず、いわゆるエントリー予備軍のチャートであるTop Adds(HOT100やBillboard200でいうBubbling Under)でも4月21日に10位内の10位にランクされるのみにとどまりました。UKアルバムチャートでは、1984年5月5日付で44位にエントリーし、これが最高位となって翌週67位に後退、2週間のチャートインでした。当時の2枚組ライブ盤はスタジオ盤に比べて、チャートには反映しにくい面もありましたが、”Kilroy”ブームがやや冷めた時期でのリリースからか、すでにStyxの内部紛争が知れ渡っていたか、その後リリースされるメンバー各自のソロ・アルバムに気が移っていたのか、いずれにしても結果的には全盛期のチャート・アクションにようにはなりませんでしたが、個人的にはチャートでは評価し得ない、ライブの素晴らしさが伝わる名盤だと思います。ビデオを観ても、Styxのライブならではの熱狂ぶりであり、非常に趣ある作品です。
“Caught in the Act”は全盛期を現出した、この5人で制作された最後のアルバムとなりました。レコードからCDへの移行期にあたる80年代の後半はメンバーのソロ・アルバムが中心となり、グループとしては、1986年発表の” A&M Gold Series“、1987年発表の”Styx Classics Volume 15“など、過去のナンバーで構成されたベスト盤のリリースにとどまりました。Styxの次作スタジオ盤としては、離脱したTommy Shawに代わり、Glen Burtnik(グレン・バートニック。gtr,vo,1999年以降はbassも)が加入した”Edge of the Century(邦題:エッジ・オブ・ザ・センチュリー。1990年10月発表)”を待たねばなりませんでした。現在、全盛期のメンバーはTommy、JY、Chuckの3人ですが、彼らはしっかりとStyxの暖簾を守っており、2017年も最新作”The Mission“で健在ぶりを示してくれています。
さて、”陽当たって精進”は昨年の4月10日から始まり、ちょうど1年を迎えました。365日すべて、”陽”を当てましたが、非常に精進できた1年でした(自分が)。これをもちまして、一旦充電したいと思います。歴史は世界史を、洋楽は主にStyxでしたがロック・アーチストをそれぞれ中心にしてご紹介させていただきました。自身についても大いに勉強させていただきました。
1年間、ありがとうございました。
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