5月15日は何に陽(ひ)が当たったか?

1983年5月15日は、ロンドンで結成されたロック/ニュー・ウェイブグループ、The Fixx(フィクス)のセカンド・アルバム”Reach the Beach(邦題:リーチ・ザ・ビーチ)”がイギリスでリリースされた日です。13日に続いて、Fixxを取り上げます。
デビュー・アルバム”Shuttered Room“に引き続き、 Rupert Hine(ルパート・ハイン)をプロデュースに迎えた本作は、ブリティッシュ・ニュー・ウェイブ・サウンドに一層の磨きがかかり、一部プログレッシブ・ロック系要素も垣間見えます。
このアルバムで、2枚看板とも言える、演説風の歌声がしびれる個性的なボーカリスト、Cy Curnin(サイ・カーニン)と、癖になるほど心地良いエッジの効いたギター・サウンドを聴かせてくれるギタリスト、Jamie West-Oram(ジェイミー・ウェスト・オーラム)の圧倒的な存在感が発揮されます。またドラマーAdam Woods(アダム・ウッズ) や、キーボーディストのRupert Greenall(ルパート・グリーンオール)の存在も、地味ながらも陰で看板の2人を支え、力強くそして優しいサウンドが縦横無尽に飛び交います。
また不在であったベーシストはアディショナル・メンバーとして、収録曲では”One Thing Leads To Another“、”Saved By Zero“そして”Liner”の3曲のベースを担当し、ソングライティングにも関わった”Alfie Agius”ともう一人、”Sign of Fire“のみベースを担当した”Dan K. Brown(ダン・K・ブラウン)”が参加しました。ダンはその後のツアーも参加して、そのまま正式メンバーとなり、全盛期のFixxを支えていきます。流動的だったベーシストは当分の間、安泰となりました。
その2人がベースをつとめた4曲のうち、”Liner”を除く3曲がシングルカットされました。イギリスのシングルチャートは振るいませんでしたが、本国よりもアメリカでの反応が非常に良かったと言えます。前作”Shuttered Room”においても”Stand or Fall”や”Red Skies”がメインストリームロック部門でのエアプレイが頻繁にかかり、その勢いを保ったまま、まずファースト・カットの”Saved By Zero” はBillboard メインストリームロックチャート(Top Rock Tracks)で9位まで上がるヒットとなりました。そしてBillboard HOT100チャートでは1983年5月28日に80位で初登場し、8月13日には20位まで上がる大ヒットとなったのです。この勢いを受けて続いてカットされた”One Thing Leads To Another“で、Fixxはついにアメリカでの人気を確立します。
8月27日に65位で初登場した”One Thing Leads To Another”は、その後45位→38位→29位→21位と、明らかに”Saved By Zero”よりもチャートアクションが大きく、次の週であっさりと記録を抜く17位へと上昇し、次の週には一気に9位とトップ10入りを果たします。トップ40入りして5週目でのトップ10入りだったことから、1983年の大ヒット曲として年間シングルチャートでも上位を期待しました。
9位の後、6位を2週続け、その後5位、4位とアップしました。しかし1983年11月5日に記録したこの4位が最高位となり、その後は下降していきました。
4位を記録した後は8週しかHOT100内にとどまることはできず(6位→8位→15位→26位→42位→82位→94位→94位。最後は年末年始の関係で集計が休みの週があったため2週連続同位)、計19週、年の後半のチャートを賑わしましたが、アップダウンの激しさとチャート・イン週が少なかったせいもあったのか、1983年の年間チャート100では、どういうわけかチャートインされませんでした。
“One Thing Leads To Another”が4位を記録した11月5日は、チャート上位にはKenny Rogers(ケニー・ロジャース)と Dolly Parton(ドリー・パートン)の”Islands In The Stream”、Lionel Richie(ライオネル・リッチー)の”All Night Long (All Night)”、Bonnie Tyler(ボニー・タイラー)の”Total Eclipse Of The Heart(邦題:愛のかげり)”という強力なヒット・ナンバーが出で立ち、5位以下からもBilly Joel(ビリー・ジョエル)の”Uptown Girl(邦題:アップタウン・ガール)”、Paul McCartney(ポール・マッカートニー)とMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)の”Say Say Say”、そして20位には同じくマイケル・ジャクソンの”P.Y.T. (Pretty Young Thing)”といった強豪がチャート上昇中であったことも不運だったのかもしれません。ただし、メインストリームロックチャートは堂々の2位にランクされましたので、大ヒットに変わりはありませんでした。この名曲は、紛れもなくFixxにとってグループの代表曲となったのです。
年が明けてもサード・カットの”The Sign of Fire”はHOT100では32位まで上がり、メインストリームロックチャートでは20位までランクされ、人気は継続しました。
3曲のシングル・ヒットによって、アルバム「リーチ・ザ・ビーチ」はロングヒットとなり、1983年10月15日付けで8位を記録しました。Fixxにとって1983年は、アルバム、シングルともにトップ10入りを果たした、まさに黄金期であったといえるでしょう。
人気は1984年も続き、この年の夏に封切られた青春映画”Streets of Fire(邦題:ストリート・オブ・ファイヤー)”のサウンドトラックにも書き下ろしの新曲”Deeper and Deeper”が使われ、メインストリームロックチャートでも堂々3位に輝き、次のスタジオ・アルバム”Phantoms(邦題:ファントムズ)”も堂々と待ち構えるのでした。

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